ドイツ・ドレスデンは風光明媚な市街地で知られているが、乗り物好きにとっても楽しい街である。
ヴァイセリッツタール鉄道とドレスデン懸垂鉄道に乗車してきた。
訪問日: 2015年3月1日
ヴァイセリッツタール鉄道の蒸気機関車に乗る
ドレスデン中央駅からSバーンのS3線で4駅、フライタール・ハインスベルク(Freital-Hainsberg)駅にやってきた。
ドイツ鉄道(DB)の駅から一つ隣のホームに行くと、ヴァイセリッツタール鉄道に乗車することができる。
ヴァイセリッツタール鉄道(Weißeritztalbahn)は、ドレスデン近郊を走る全長約26km、軌間750mmの観光鉄道である。
全列車が蒸気機関車牽引で、基本的に毎日、繁忙期は1日6往復、閑散期は1日3往復している。
日本では考えられないくらい手軽にSLに乗れるのが魅力的である。
夏はオープン客車もあるらしいが、冬なので通常の客車のみ連結されている。
始発駅を出発すると、しばらくはドイツ鉄道(DB)の線路と並行する。電化標準軌の線路と、非電化狭軌の線路の違いをよく見るべきである。
今度は街中に入る。併用軌道ではないが、道路の真横をSLが走るのはおもしろい。
バス停のような駅に停車する。
町中を抜けるとヴァイセリッツ渓谷に入る。山間の途中駅でも結構な乗り降りがある。
列車は川の真横を車体をくねらせながら進んでいく。
ほとんど河原のようなところを走る箇所もある。
渓谷を抜け、景色が開けてくる。
終点のディポルディスヴァルト(Dippoldiswalde)に到着した。2015年当時はここが終点だったが、2023年現在はクアオルト・キプスドルフ(Kurort Kipsdorf)まで延長されているようである。
機関車に給水作業を行う。
蒸気機関車が走っていなければ一生訪れることのないようなドイツの田舎町に佇んでいることに、ちょっと不思議な感覚を覚える。
ここはドイツ中から観光客が集まってくるような場所ではない。地域の人々の楽しみのために、のんびりと走る小さな鉄道である。
折り返しの列車に乗って、再びフライタール・ハインスベルク駅に戻ってきた。地元の住民の日常に溶け込んだ、日本にはあまりない雰囲気のSL保存鉄道の姿を見た。
ドレスデン懸垂鉄道に乗る
ドレスデンの市街地にやってきた。
一見するとふつうのケーブルカーのような車両に見えるだろうか。
だが、これはケーブルカーともロープウェイともモノレールともつかない、不思議な鉄道なのである。
ドレスデン懸垂鉄道(Schwebebahn Dresden)は1901年に開業した、一応は懸垂式モノレールである。だが、平坦地ではなく急勾配を登る路線であるし、動力は車両に結び付けられた鋼索によって伝えられている。やはりケーブルカーでもあるし、ロープウェイでもあるような鉄道なのである。
車両の先頭部には操作台があるが、基本的には無人運転である。
モノレールの線路。これだけ見るとやたら支柱が多いロープウェイに見えなくもない。
ほんの数分で車両は山頂駅に到着した。
山頂駅の眼下にはエルベ川が流れる。右下にかかる橋は「青い奇跡」(Blaues Wunder)と呼ばれている。
中心部の方を見るとヴァルトシュレスヒェン橋(Waldschlößchenbrücke)が見える。この橋が建設され景観が損なわれたため、ドレスデンのエルベ渓谷は世界遺産の登録を抹消されたという。私はそんなに悪い景観だとは思えないのだが……。
ドレスデンのケーブルカーに乗る
懸垂鉄道の近隣には、もうひとつケーブルカー(Standseilbahn Dresden)も走っている。
こちらはごくふつうのケーブルカーである。
懸垂鉄道に比べると地味な存在だが、地元住民の足として定着しているようだった。
ドレスデンの街を歩く
ドレスデンの乗り物の魅力はモノレールやケーブルカーだけではない。ドレスデンの交通の主役は、130kmにも及ぶ路面電車である。
黄色に統一された車体は、市内のどこに行っても見ることができる。
車両も比較的新しいものが多数を占めており、駅の設備も綺麗で、案内も充実している。路線網は複雑だが、旅行者にも優しい乗り物である。
先ほど懸垂鉄道から眺めた「青い奇跡」の橋。
旧東ドイツの信号機にいた「アンペルマン」(Ampelman)も、ドレスデンでは現役であった。
つづく。