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twinrailの海外鉄道旅行記録

北朝鮮へ旅行する方法・2019年版 朝鮮平壌開城巡検 01-02

連載開始早々だが旅行記は一旦保留しておき、「朝鮮ってどうやったら行けるの?」という質問に回答しておこうと思う。

端的に言えば、メチャクチャ簡単でもなかったが、そんなに難しくもなかった。

2019年9月時点の、朝鮮へ旅行に行く方法を書き残す。

はじめに

2023年2月現在、日本国外務省は「北朝鮮」への渡航に対して「自粛」を要請している。

当記事は当時の個人的な記録ありのままに記したものであり、渡航を積極的に推奨するものではない。

また、2023年2月現在、新型コロナウイルスのため、朝鮮への入国は事実上不可能になっている。

もしそれでも朝鮮に渡航したいという方がいたら、外務省および各国政府からの情報を十分に把握し、リスクを承知のうえ、確固たる自己の判断と責任のもとに検討してほしい。

旅行代理店を選ぶ

朝鮮観光旅行の最大の特徴はなんといっても「旅行代理店・ガイド・専用車が必須」ということに尽きる。要するに、自由旅行・個人行動は不可能ということである。

なので、まずは旅行代理店を探す必要がある。実際のところ、どの代理店を選んでも、現地でガイド・専用車を手配してくれるのは「朝鮮国際旅行社」(조선국제려행사)の「日本人部」という部署が担当になる。

代理店は、インターネットで「朝鮮 旅行」などのキーワードで検索すると探すことができる。その中のいくつかを紹介する。

私が実際に利用したのは「コリアツアーズ」である。大連にある旅行社で、社長は中国人だが日本語がとても堪能である。日本人の担当者もいるので言語や手続きの面で全く心配しなくてよかった。担当者は朝鮮関連のイベントにもよく顔を出している。twitterなどもあるので気軽に話しかけてみるといいと思う。

「JSツアーズ」は東京にある旅行社で、おそらく社長は日本人、担当者は在日朝鮮人である。ユニークなツアーを企画していることで有名である。こちらも担当者が朝鮮イベントによく顔を出している。同様にtwitterなどもあるので気軽に話しかけてみるといいと思う。

「中外旅行社」は、朝鮮旅行を取り扱う代理店の中では最古参かつ最大手になる。東京に所在し、業務のメインは在日朝鮮人の朝鮮渡航のようである。最大手だけあって値段もやや高く、少しお固いイメージもあったが、近年twitterアカウントもでき、少しずつイメージも変わってきているようである。

各社のサイトを見て、大まかな希望を決めたら、基本的にはフォームやメールでの問い合わせになる。サイト上で申し込みまで完了、というわけにはいかないのは仕方ない。

私は複数の代理店に見積もりを取ってもらった。あとは返答内容や値段を比べて決めることにした。どこもサポートはしっかりしているし、最終的に現地での担当は朝鮮国際旅行社になる。

入出国の手段を決める

旅行社を決めたら、続いて入出国の手段を決めることになる。朝鮮への移動手段はほぼ以下の手段に限られている。

※2019年9月時点。2023年2月現在、新型コロナウイルスのため、全て利用不可。

入国

出国

注記

  • 平壌時間はUTC+9、北京時間はUTC+8である。
  • 各航空便は毎日運航ではない。同一便名でも曜日によって時刻が異なる。
  • 細かい時刻はしばしば変更されるので、ここでは大まかな時間を示している。

航空機を利用するならば、たいていの旅行者は朝鮮のフラッグキャリアである高麗航空を利用するケースが多いようだ。高麗航空ならば平壌に夕方着・早朝発になる。北京空港を利用するならば、日本朝発・平壌夕着/平壌朝発・日本夕着も可能である。

丹東から列車を利用すれば、朝鮮国内の風景が見られるというメリットがある。ただし、丹東早朝発・夕方着なので、航空機利用に比べて日本からの所要時間はそれぞれ1日ずつ増えるが。もちろん航空機と列車の片道ずつの利用も可能である。

なお、一応はウラジオストク発着の高麗航空や、ハバロフスク・モスクワ発着のロシア鉄道/朝鮮鉄道も運行していた。だが、日本の旅行代理店では基本的に取り扱っていないようである。特に列車に関しては運行も不安定で、あまり推奨されなかった。

ビザを申し込む

引き続きメールでやりとりして、細かい日程などを相談していく。朝鮮入国日・出国日が決定したらビザを申し込むことになる。

ビザの申し込みに必要なのは以下の3点である。(コリアツアーズの場合。他社も大差ないと思われる。)

  • パスポートの顔写真ページの画像
  • 証明写真の画像
  • 申し込み用紙ファイル

以上3点を旅行社にメール等で送付するだけで、簡単に手続きが終わる。大使館等に訪問したり郵送したりする必要もないし、そもそも朝鮮の在外公館は日本にない。

一つ注意しなければならないのは、申し込み用紙に職業記載欄があるということである。ここに記者・自衛隊員・警察官・国家公務員などの職業を記載した場合、ビザが許可されない可能性が高い。記者が入国を許可されないのは、観光ビザで取材活動をされるのを防ぐためということのようらしい。

自衛隊員・警察官・国家公務員などに関してはその理由が容易に想像できるが、日本国外務省からも国家公務員などについては渡航を「原則見合わせ」するよう通知されている。これは「自粛」と表現されている一般国民より強い表現である。いずれにせよ、職場で大騒動になるであろうから、渡航は辞めておいたほうが賢明だと思う。

ビザは数週間で発行される。入国地点で旅行社の社員から受け取る形になる。

持ち物を揃える

朝鮮に特別なものを持っていく必要は特にない。ホテルのコンセントは日本と同一のA型である。通貨は2019年現在は中国人民元が広く流通していたが、中国から入出国するのであれば、基本的には所持していることになるだろう。

一方で、「持ちこんではならないもの」が存在する。その一例を挙げる。(2019年現在。)

  • 朝鮮に関する出版物(日本語書籍も含む)
  • 朝鮮のバッジの模造品(主に中国で販売されている土産品)
  • 朝鮮の紙幣の模造品(主に中国で販売されている土産品)
  • 双眼鏡
  • 150mm以上の望遠レンズ
  • GPS機能付きカメラ

これらの物品を持ち込むと、入国時の税関による手荷物検査で没収される。

一方で、スマートフォンGPS機能付きも含む)やカメラ(GPS機能がないもの)の持ち込みは問題ない。撮影した写真の検査は2019年時点では入出国ともになかった。

クレジットカードは使えないため、中国人民元などを多めに用意する必要がある。SIMカードWifiの存在は耳にしたことはあるが、非常に高価であるらしい。結局のところ私は利用しなかった。(そもそも旅行中は忙しくてインターネットをする暇もなかった。)

現地での注意点を確認する

朝鮮もふつうの外国である。「水道水を飲まない」「トイレットペーパーを持参する」などの海外旅行で注意すべき一般的なポイントは確認しておく必要がある。

一方で、朝鮮特有の注意すべきポイントもあるので気をつける必要がある。主な3つは以下の通りである。

  • 金日成金正日金正恩銅像や写真、書籍をていねいに扱う
  • 警察官・軍人・工事現場の写真を撮影しない
  • ガイドなしで外を出歩かない

前の記事にも書いたように、金日成金正日金正恩に対する不敬な行動は、外国人であっても厳しい処罰の対象になる。銅像や写真を撮影する際は、顔が見切れないように撮影する必要がある。写真が載った書籍や新聞もゴミ箱に捨ててはならない。とはいえ、このあたりはガイドからも事前に注意されるし、旅行中は常にガイドが見守っている。

工事現場を撮影してはならないのは軍人が働いていることも多いからだ。また、一般市民も観光客慣れしていないので、写真を撮る時は注意する必要がある。

夜間にガイドなしで外を出歩いてトラブルになるケースは非常に多いらしい。ガイドに言えばついてきてくれる場合もあるので声をかけるべきである。

おおむねこの3点を守れば問題になることはほとんどない。また、ガイドは何かトラブルが発生した時に旅行者を保護してくれる存在である。通常の外国と同じようにガイドのアドバイスに従い、現地の習慣を尊重することが大切である。

なお、通常の海外旅行でよく問題になるスリやボッタクリに関しては、ほぼ発生することはない。

 

いよいよ次回からは旅行の全貌についてお伝えする。

つづく。