朝鮮の鉄道に乗る。前回の乗車から3年半が経ち、季節も冬から夏になった。
タイムスリップしたかのような風景が広がる朝鮮鉄道の車窓をご覧いただきたい。
訪問日: 2019年9月13日
丹東駅から国際列車に乗り込む
朝鮮との国境に位置する丹東駅に来た。旅行社の人からきっぷをもらい、いよいよ国際列車に乗る。前回は34人もいたので「硬臥」(3段開放寝台)だったが、今回は「軟臥」という2段4人個室寝台になった。メンバーは6人だったため、全く別の中国人の80代ぐらいのおばあさま2人組と同室になった。
丹東駅の構内に入る。国内列車乗り場は1階、国際列車乗り場は2階に存在する。中国の出国手続きは駅の構内で行われる。多数の団体旅行客がいたが、ほとんどが中年から老人であった。どうやら中国では朝鮮が「昔の中国を感じられるレトロな観光地」として人気になっているらしい。
改札が始まり、丹東駅1番乗り場に出る。ホームの幅がメチャメチャ広い。
平壌行きの列車番号は95/52となっている。前回と同様、今回も中国鉄道の車両である。
我々が乗車するのは白と青に塗られた軟臥車である。1室を同行のおばあさま2人組に渡して、我々6名はもう1室を占領する。基本的に下段のベッドに座り、寝たい人は上段で寝るということにした。
この車両の方向表示は古いタイプのものであった。表示は「北京-平壌」になっているが、おそらくは丹東までの運用だろうか。
丹東から平壌までのチケット。一人当たり254中国元(2019年9月当時で約3900円)である。平壌のラテン文字表記が「PHENJANG」になっているが、これはどういう表記なのだろうか?
朝鮮民主主義人民共和国の観光証(관광증)、すなわちビザである。
朝鮮への入国に際してはパスポートへのスタンプに代わってこの書類が使用される。
丹東駅を出発して鴨緑江を越える
10:00ちょうど、丹東駅を出発する。出発して中朝友誼橋を渡る。すぐ右手に鴨緑江断橋が見える。この先は、いよいよ朝鮮である。
我々が乗っている車両は最後尾なので後方の展望が眺められる。橋を朝鮮側から見ると「朝中親善橋」(조중친선다리)と書かれている。鉄道道路併用橋であり、片側一車線一方通行の道路には多くのバスやトラックが列を成している。ところで、線路を横断している人はおそらく中国人観光客なのだろうか。
新義州手前に謎の電車がいた。
新義州駅で入国審査を受ける
列車に入国審査官や税関職員が乗り込んできて、パスポートのチェックや荷物検査を始めた。前回はスマホやカメラ、PCの中の写真までチェックされたが、今回はそこまでは見られなかった。少し緩くなったのだろうか。
しかし、職員があっというような顔をして何かを見つけた。メンバーの一人の鞄から北朝鮮のことを書いた本が出てきたのだった。他の国とは違う北朝鮮の特殊な入国条件として「北朝鮮に関する書籍を持ち込まないこと」というものがある。私は事前にメンバーに伝えていたのだが、それを忘れて持ってしまったのだった。
しばらく職員の間で審議がされたあと、英語が話せる若手の職員がやってきて「ディス・イズ・ア・バッド・ブック」と伝えてきた。本はあえなく没収となった。「悪書」が追放された瞬間だった。
かわいそうなのでここにリンクを貼っておくため、各自購入してほしい。なお、筆者にアフィリエイトは特に入らない。
前回との大きな違いとして、入国審査が終わったらドアが開いてホームを自由に散策できた。一応、新義州で降りて観光するツアーも存在するようである。ホームは移動販売が出て賑やかになっていた。
ここで、新義州~平壌のみ運行する朝鮮鉄道の車両が連結された。食堂車には「シ(시)30 471」とある。前回の復路で連結されていたものと同じだ。
こちらは一般寝台車両である。車体には「タチム(다침)30 5317」と書かれている。
方向表示は「平壌-新義州」(평양-신의주)とある。朝鮮の国章が眩しい。
我々の列車の反対側(新義州駅舎から数えて2番目の線路)には国内列車と思われる車両が停車していた。奥の車両には「食堂車533」、手前の車両には「9084」の表記がある。
9084と書かれた車両のドア。
同車両の車体表記。
同車両の座席。6人コンパートメント席のようである。
コンパートメント席のドア。
朝鮮の列車の時刻表
列車の時刻表。2019年9月時点では平壌時間はUTC+09:00になっていたが、時刻表はUTC+08:30のままであった。
もう一つ掲示されていた時刻表。こちらは平壌時間がUTC+09:00になっているが、時刻が微妙に違う。どっちが正しいんだ?
さらに別の時刻表。こちらも平壌時間がUTC+09:00になっているが、時刻がやはり違う。もうどうなっているんだ?
平義線で新義州から平壌へ
13:08、新義州を出発する。少し雨が降り出してきた。
南新義州(남신의주)駅。
前回2時間以上運転を見合わせた龍川(룡천)駅。今回は通常通り通過した。
内中(내중)駅で対向列車と行き違う。機関車は「赤旗(붉은기)96005」と読み取れる。
ぶれていて申し訳ないのだが客車の様子。車両は先ほど新義州駅にいたものと同じようだ。車体番号は「9083」「9082」と読み取れる。乗車しているのはほとんど中国人観光客のようである。行先表示が全く無かったので、団体列車かもしれない。
塩州(염주)駅にいた「強行軍(강행군)15-12」機関車。
塩州駅の駅舎。
東林(동림)駅。
昼時になり、お腹が空いたので食堂車に行く。座ると自動的に定食が出てくるシステムでメニューの選択の余地もないが、味は美味しかった。店員は朝鮮人で、牡丹峰楽団のコンサートDVDを見ながらゆるゆると働いていた。曲が始まるたびに我々がブチ上がっていたので何事かと思っていただろうが。
宣川(선천)駅にいた謎の電車。
宣川駅の駅舎。
9月も中旬になり、田んぼは色づき始め、コスモスが咲いている。軌道はある程度強化されているように思える。
「硬臥」(3段開放寝台)の様子。
朝鮮鉄道の制帽。
郭山(곽산)駅。
下端(하단)駅。
「0313」と書かれた電気機関車。
赤旗5338機関車。
新安州(신안주)駅にいた赤旗5348機関車。
大橋(대교)駅。
文徳(문덕)駅。
龍峰(룡봉)駅。資料では尼西(니서)駅という廃駅になっているが、改名した上で再開業したのだろうか?
内燃(내연)868機関車。
粛川(숙천)駅。駅舎がかなり新しい。
漁波(어파)駅。
熙川(희천)高速道路を走る2階建てバス。
道端で乗り降りする高速バス。
順安(순안)駅。
西浦(서포)駅。
平壌地下鉄革新線・黄金原(황금벌)駅前を通る。
赤旗6機関車。
平壌駅に到着する
前回と同じ、朝鮮国際旅行社(조선국제려행사)の金錦淑(김금숙)氏、金泰慶(김태경)氏の2名のガイドと合流し、3年半ぶりの再会を喜んだ。
駅構内を通って外に出る。液晶テレビに「平壌-豆満江-モスクワ」(평양-두만강-모스크바)の列車の時刻表が表示されていた。
夜の平壌駅。駅前にはバスやタクシーが多数停車し賑わいをみせている。夏という季節の良さもあるであろうが、前回よりも相当に観光客の数は増えた。
つづく。